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京都地方裁判所 昭和55年(ワ)1057号 判決

原告 株式会社辻和 更生管財人 酒見哲郎

右訴訟代理人弁護士 田中実

被告 株式会社 三和銀行

右代表者代表取締役 赤司俊雄

右訴訟代理人弁護士 久保井一匡

同 福原哲晃

同 森信静治

主文

被告は原告に対し金一、二二四万五、四八〇円およびこれに対する昭和五五年七月一六日からその支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文一、二項と同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  株式会社辻和(以下「更生会社」という。)は、昭和五四年七月二一日京都地方裁判所に対し会社更生手続開始の申立(同裁判所昭和五四年(ミ)第二号事件)をし、同裁判所は同日原告を保全管理人に選任し、弁済禁止、借入禁止の会社更生手続開始決定前の保全処分の命令をし、その後昭和五五年三月二六日更生会社に対し会社更生手続開始決定をし、原告を更生管財人に選任した。

2  更生会社は被告との間の手形割引取引に基づき、被告から昭和五四年三月一〇日別紙約束手形目録(一)記載の約束手形一通(以下「(一)の手形」という。)、同年五月二三日同目録(二)、(三)記載の約束手形各一通(以下「(二)、(三)の手形」といい、(一)の手形とあわせて「本件手形」という。)の割引を受けた。

3  ところが本件手形の振出人である訴外きさく商事株式会社(以下「きさく商事」という。)が(一)の手形をその期日である昭和五四年七月九日に支払わなかったため、更生会社は会社更生手続開始の申立に先立つ同月一〇日(一)の手形のみならず(二)、(三)の手形についてもこれを被告から買戻し、同日その買戻代金合計金一、二二四万五、四八〇円を被告に支払った。

4  本件手形の買戻および買戻代金の支払は、更生会社が更生債権者、更生担保権者を害することを知ってなした行為であるから、原告は本訴状をもって、会社更生法七八条一項一号により本件手形の買戻および買戻代金の支払を否認する。

5  よって原告は被告に対し金一、二二四万五、四八〇円およびこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和五五年七月一六日からその支払ずみに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否および主張

1  請求原因1ないし3の事実は認める。

更生会社は昭和四九年五月三一日被告との銀行取引開始に当って被告に対し、割引手形の買戻につき、手形の主債務者が期日に支払わなかったときもしくは信用失墜を示す一定の事由の一にでも該当したときは、その者が主債務者となっている手形について、被告から通知催告等がなくても当然手形面記載の金額の買戻債務を負い、ただちに弁済する旨の約定(銀行取引約定書六条一項参照、以下「割引手形の買戻約款」という。)をしている。このような取扱は本件に限らず一般に銀行が割引手形が不渡りとなった場合に行なっているところであり、被告は右約定に従い、通常の銀行実務の処理にならって更生会社に対し、昭和五四年七月八日不渡りとなった(一)の手形のみならず(二)、(三)の手形についても、同月一〇日これを同時に買戻してもらい、買戻債務の弁済を受けたものである。

2  同4の事実は否認する。

三  抗弁

被告は本件手形の買戻および買戻債務の弁済が更生債権者、更生担保権者を害することを知らなかった。

1  更生会社は和装小物は京和会、染呉服はK、S、Sメンバーを主力仕入先に逐年呉服総合前売問屋として業容を拡大し、京都の繊商加盟問屋の中でも上位五社に入る大手商社で、社会人野球チームがあることでも知られ、昭和五〇年以降は東京店の拡充が功を奏し、全国一円の地方問屋、小売商、量販店を対象に販売して好業績をあげてきた京都室町の老舗中の老舗であり、年商、申告利益は次のとおりである。

年度

年商

申告利益

昭和五二年二月期

八二億二、〇〇〇万円

二億八、二〇〇万円

昭和五三年二月期

八七億八、四〇〇万円

三億一、四〇〇万円

昭和五四年二月期

九三億〇、五〇〇万円

三億四、七〇〇万円

被告は昭和四七年に更生会社との間に預金、貸出等の銀行取引を開始して以来、更生会社が会社更生手続開始の申立を行なうまで安定した取引を継続していたものであって、更生会社の経営悪化、倒産など全く予測できなかった。

2  被告は更生会社の求めに応じ、昭和五四年五月二三日には(二)、(三)の手形を含めて合計金六、一四三万五、〇〇〇円の、同月三一日には合計金五、四九二万一、〇〇〇円の、更生会社の倒産寸前の同年六月三〇日には合計金一、四一七万七、〇〇〇円の商業手形の割引を行なっており、更生会社の経営悪化について知る由もなかった。

3  被告と更生会社との間の過去一年間の商業手形割引取引の推移は次のとおりであり、昭和五三年一一月以降一時減少した時期もあるが、昭和五四年三月以降は再び増大しており、被告は更生会社の経営悪化について知り得なかった。

年月

月末残高

月中割引取組額

昭和五三年  六月

一億八、八〇三万五、〇〇〇円

四、〇一〇万八、〇〇〇円

同年  七月

一億八、八八二万二、〇〇〇円

五、一二六万八、〇〇〇円

同年  八月

二億〇、一七五万七、〇〇〇円

四、九八〇万二、〇〇〇円

同年  九月

一億九、八二一万七、〇〇〇円

三、四五三万八、〇〇〇円

同年一〇月

一億九、四八五万       円

一、九九七万二、〇〇〇円

同年一一月

一億五、二七〇万四、〇〇〇円

同年一二月

一億〇、三六六万七、〇〇〇円

昭和五四年  一月

七、三六九万三、〇〇〇円

同年  二月

三、二〇七万四、〇〇〇円

同年  三月

八、三四六万七、〇〇〇円

六、一六一万四、〇〇〇円

同年  四月

一億一、四〇五万二、〇〇〇円

五、五三一万        円

同年  五月

一億九、九八〇万九、〇〇〇円

一億一、六三五万四、〇〇〇円

同年  六月

一億九、九九二万四、〇〇〇円

一、四一七万七、〇〇〇円

4  更生会社の昭和五三年(昭和五二年三月一日から昭和五三年二月二八日まで)の事業年度の申告所得は金三億一、四三九万九、二五七円、昭和五四年(昭和五三年三月一日から昭和五四年二月二八日まで)の事業年度の申告所得は金三億四、七三三万六、九五八円であって、いずれも黒字であり、被告としては更生会社が好業績の会社であることに疑念をさしはさむ余地はなかった。

5  被告は、このような更生会社の業績、手形割引取引の推移などから、本件手形の振出人であり、更生会社の取引先であるきさく商事が昭和五四年七月九日手形不渡りを出したとしても、更生会社自身が倒産の危機に瀕しているとは全く予測できず、更生会社が同月二一日突如として会社更生手続開始の申立をしたことを新聞ではじめて知り驚いた次第であり、被告としては本件手形の買戻当時右買戻および買戻債務の弁済が更生債権者等を害することを全く知らなかった。

四  被告の主張に対する反論および抗弁に対する認否

1  割引手形の買戻請求権の法律的性質については説の岐れるところであるが、そのいずれの立場に立つにしても、また、被告主張のように銀行取引約定に基づく特殊な権利であるとしても、更生会社の買戻代金債務の弁済であることにかわりはなく、倒産直前にした本旨弁済でも、その弁済が他の債権者を害することを知ってなされたものである限り、会社更生法七八条一項一号の故意否認の対象になることは明らかである。更生会社はこの代金債務の弁済によって資金を流出させ会社の責任財産の減少を来たさせ、この分他の債権者への弁済が減少されることになるから、本件手形の買戻が更生債権者等を害することはいうまでもなく、また、更生会社がこれを知ってなしたことも明らかである。

2  被告主張の抗弁事実は争う。

(一) 更生会社が倒産した直接の原因は、きさく商事の倒産と株式会社創匠苑(以下「創匠苑」という。)の動揺であったが、更生会社の倒産は昭和五四年四月ころには決定的になっていた。すなわち、同年五月末織研株式会社(株式会社中央の子会社)の会社整理の申立に続き、同年六月水野正株式会社、丸越株式会社グループ、さらに同年七月株式会社中央の連鎖倒産が発生した。このように京都室町には大型倒産が連続し、これらの企業群は融通手形の操作をしていたため一蓮託生的に連鎖倒産をする危険があった。右グループと深い取引があったのが更生会社グループの一角を占めるきさく商事と創匠苑であり、この両社が右の大型倒産の煽をくい行詰った結果、更生会社が会社更生手続開始の申立をするのやむなきに至ったのである。

(二) 被告五条支店はもっぱら京都室町の呉服問屋筋を相手とする貸付を担当しており、右問屋筋の動きを逐一知りまたは知りうべき立場にあった。被告の貸付係の椿本桂司らは自らまたは預金係からの情報収集によって、あるいは信用情報の捕捉などによって貸付先の動向に注意していたものであり、これは金融機関としての立場から当然のことである。このような立場にある被告が昭和五四年の室町の大型倒産の嵐の中で、更生会社の動向についてのみ無関心であったとはとうてい考えることができず、むしろ金融機関としての高度の調査義務および調査能力からすれば、被告は右大型倒産の流れを知り、当然更生会社もその影響を受けることを認識しながら、本件手形の買戻を要求して買戻をさせたものといわなければならない。

(三) 被告が更生会社との取引について細心の注意をもって対処していたことは次の事実からも明らかである。すなわち、被告の更生会社に対する月中割引取組額は昭和五三年一一月ころからなくなっているが、これは被告が更生会社に対し手形割引の銘柄を選別し(具体的には平安商事株式会社、高坂株式会社、聖光有限会社振出の手形である。)たことによるものである。被告が更生会社の信用力を評価して手形割引を行なうのであれば、別段このような銘柄の選別をする必要は全くないのであり、被告はむしろ従前から更生会社についてそれなりに危機意識を有していたものというべきである。

また、被告の貸付係の右椿本らは昭和五四年七月六日更生会社を訪れた際、きさく商事振出の本件手形について、いまだ手形不渡りを出していないにもかかわらず、その買戻を要求した事実がある。これは同じく昭和五四年に相次いで連鎖倒産した金商又一株式会社グループときさく商事とが深い関係にあるため、事前に本件手形の買戻を要求したものである。

(四) 通常商業手形取引の場合、ある銘柄について不渡り事故があったときは、すでに期日の到来したものについては割引手形の買戻をさせることが多いが、同一銘柄の手形の不渡りがあっても期日の到来していないものについては割引依頼者の資金繰りを考慮して期日が到来するまで買戻を猶予するのが普通である。ところが被告は期日の到来しているのは(一)の手形についてのみであって(二)、(三)の手形については期日が同年一〇月二三日および同年一一月八日であるのに、そのすべてについて買戻を要求し実行させている。これは被告が更生会社に対しいかに危機意識を有していたかを物語るものである。

(五) 以上のとおりであって、あらゆる観点、とりわけ被告が高度の調査義務および調査能力を有する金融機関であることからみて、被告は更生会社が倒産の危機にあること、本件手形の買戻および買戻債務の弁済が更生債権者等を害することを知り、または知りうべき状況にあったということができる。

五  被告の再反論

1  被告は更生会社から更生会社の倒産が創匠苑に対して金が流出したことによるとの説明を受けておらず、決算書が粉飾されていたことは知る由もなかった。また、更生会社の倒産については会社内部の者でさえ寝耳に水であったことが窺われ、一取引銀行にすぎない被告が更生会社の倒産または経営悪化について知りまたは知りうべき筈がない。

2  更生会社の割引手形について昭和五三年一一月から月中割引取組額がなくなったのは、更生会社の割引手形のうち平安商事、高坂、聖光振出の手形の残高がふえてきたため、これらの会社と更生会社との取引の流れを明確にするよう申入れたところ、更生会社の方で割引依頼をしなくなっただけであり、更生会社の信用とは無関係である。また、被告は昭和五四年七月六日に更生会社に対しきさく商事振出の割引手形の買戻を要求した事実は全くない。

3  主債務者が不渡りを出した場合には、期日の到来していない手形についても、銀行取引約定に基づきただちにその買戻を要求するのが通常であり、被告が更生会社に危機意識をもっていたということは全くない。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1ないし3の事実は当事者間に争いがなく、《証拠省略》によると、次の事実を認めることができる。

1  更生会社は京染呉服、和装小物等の卸、小売を業とし、昭和一七年一一月五日に設立され、本店を京都市下京区室町通松原下る元両替町二五七番地、東京店を東京都中央区日本橋横山町一〇番一二号に置く、資本金二億円の会社(呉服総合前売問屋)である。

2  更生会社は昭和四九年五月三一日被告と銀行取引を開始するに当って、被告に対し割引手形の買戻につき、更生会社が信用失墜を示す一定の事由の一にでも該当したときは全部の手形について、手形の主債務者が期日に支払わなかったときもしくは信用失墜を示す一定の事由の一にでも該当したときは、その者が主債務者となっている手形について、被告から通知催告等がなくても当然手形面記載の金額の買戻債務を負い、ただちに弁済する旨、割引手形について債権保全のため必要と認められる場合には、右以外のときでも被告の請求によって手形面記載の金額の買戻債務を負い、ただちに弁済する旨の約定をした(銀行取引約定書六条一項、二項)。

3  更生会社はその系列会社である創匠苑が昭和四八年のオイルショック以来、過剰在庫をかかえ経営内容が悪化したため資金援助を行ない、莫大な資金が創匠苑へ流出し、さらに創匠苑と深い取引関係にあったきさく商事の経営も悪化し、きさく商事の破綻は創匠苑ひいては更生会社の破綻につながるおそれがあったため、昭和五三年八月ころから金商又一株式会社を介在させて商品を回転させる方法により金融取引をしたほか、きさく商事から手形を受取ってこれに裏書し金融機関から割引を受けてこの金員をきさく商事に貸付けるなどして資金援助をしてきた。

4  ところが昭和五四年五月末織研株式会社(株式会社中央の子会社)の会社整理の申立に続き、同年六月には水野正株式会社、丸越株式会社グループ、さらに同年七月には株式会社中央の連鎖倒産が発生し、これらのグループと取引関係にあった創匠苑、きさく商事が右大型倒産の煽をくって行詰り、きさく商事が同月九日手形不渡りを出して倒産した。

5  このため更生会社は被告を含む取引金融機関から総額約二億六、〇〇〇万円の割引手形を買戻すなどし、信用不安が増し運転資金が涸渇して、同月二三日期日の支払手形約五億円を決済する目途が立たなくなり、その経営を継続することが不可能となったため、同月二一日前記争いのない会社更生手続開始の申立をするのやむなきに至った。

以上のとおり認めることができ、右認定を動かすに足りる証拠はない。右認定の事実によると、本件手形の買戻および買戻債務の弁済は、更生会社が倒産直前にした本旨弁済ではあるが、これによって会社財産の減少を来たさせ、この分他の債権者への弁済が減少されることを認識のうえ、更生債権者または更生担保権者を害し被告に利益を与える意思をもってなしたと認められるべき状況のもとになされたものというべく、会社更生法七八条一項一号にいわゆる故意否認の対象になるものというべきである。しかして原告が本訴状をもって否認権を行使したことは本件記録に徴し明らかである。

二  そこで被告の抗弁につき検討するに、《証拠省略》によると、更生会社は昭和五〇年ころ以降東京店の拡張などにより呉服総合前売問屋として業容を拡大し、全国一円の地方問屋、小売商、量販店を対象に販路を確立して好成績をあげてきたこと、被告の更生会社に対する割引限度額は当初金五、〇〇〇万円であったが、再三引上げられ、昭和五三年二月以降金二億円であり、月中割引取組額は同年一一月から昭和五四年二月までの間皆無であったが、同年三月以降再び増大し、被告は更生会社の求めに応じ同年五月二三日には(二)、(三)の手形を含めて合計金六、一四三万五、〇〇〇円、同月三一日には合計金五、四九二万一、〇〇〇円、同年六月三〇日には合計金一、四一七万七、〇〇〇円の商業手形の割引を行なったこと、被告は更生会社から毎年確定申告書の控、決算報告書を入手していたが、これによると、更生会社の昭和五二年三月から昭和五三年二月までの事業年度の売上高は八七億八、四〇〇万円余、申告所得は金三億一、四三九万九、二五七円、昭和五三年三月から昭和五四年二月までの事業年度の売上高は九三億〇、五〇〇万円余、申告所得は金三億四、七三三万六、九五八円であって、被告五条支店の融資係の椿本らはこれを鵜呑みにし、更生会社が好成績の会社であると評価し、信頼し切っていたことを認めることができる。しかしながら、銀行は調査機関を常置して取引先の信用状態の調査に当るのが実験則上当然であって、被告本店審査部が被告五条支店から比較対照表により半年か一年置きに報告を受けていたにとどまり、割引限度額内での取引をすべて同支店に一任し、更生会社の動向について全く調査しなかったとはとうてい考えられないばかりでなく、前掲各証拠によると、被告五条支店は京都室町の呉服問屋約一五〇社を相手とする貸付を担当しており、右椿本らは自らまたは預金係(外交)からの情報収集によって右問屋筋の動向に細心の注意を払っていたこと、右椿本は昭和五三年一一月ころには取組残高の増加した平安商事株式会社、高坂株式会社、聖光有限会社の振出手形につき疑念を抱き更生会社に右三社との取引の流れをただしたため、爾後更生会社からの割引の申出がなく、前認定のとおり月中割引取組額が四か月間皆無となったこと、被告はきさく商事が(一)の手形を期日に支払わなかったため、更生会社に対し(一)の手形のみならず、いまだ期日の到来していない(二)、(三)の手形についても買戻を要求し実行させ、買戻を猶予しておらず、買戻の翌日から期日までの割引料相当額を控除していないこと(銀行取引約定書六条一項からは、期限未到来の手形を含む全部の手形について当然に買戻債務を負うとは解されない。)が認められ、これらの点を考慮すると、被告が更生会社に対し危機意識を有していたことが推認され、むしろ被告は高度の調査能力によって更生会社が他への資金流出を粉飾して隠蔽していたとはいえ、他の一部銀行と同様、京都室町の相次ぐ連鎖倒産の流れを知り、更生会社もその影響を受けるであろうことをいち早く察知しながら、本件手形の買戻を要求して買戻をさせたものと推認することができる。被告のこの点の抗弁は採用できない。

三  以上の次第で、被告は原告に対し金一、二二四万五、四八〇円およびこれに対する原告が裁判上否認権を行使した日の後である昭和五五年七月一六日(本訴状送達の日の翌日)からその支払ずみに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があるものというべく、原告の本訴請求は理由があるから正当としてこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 田坂友男)

〈以下省略〉

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